17のとしに
 それでも、途中寝たりしながら暇をつぶし8時間が経過していた。もう夕方である。よく考えると昼飯もろくにとっていない。少し出かけようかと起き上がって準備を始める。部屋着からパーカー、下は使い古したジャージに着替え、少し鏡を見、財布と携帯を持って家を出た。
 俺は住宅の密集地に住んでいる。住宅街というやつか。裏の路地は薄暗くて人が少ない。コンビニにでも行こうかと俺はのたのたと歩いていた。こんな時間に表通りを歩いていると現役中高生に出会ってしまうなだけだが。歩いて10分くらいたったころだろうか。向かい側にセミロングの制服を着た女子が歩いてくるのが見えた。イヤホンをしてうつむいて歩いている。…根暗かな。しかし、彼女と距離が近くなってくると、はっとした。
「…奈央じゃん」
 奈央だった。あの、疎遠になってしまった。奈央。近づくにつれて確信になっていく。5メートルの距離まで近づいたとき、俺は
「あれ、奈央?」
彼女も視界を俺に合わせた。
「…クラじゃん」
「あ、ああうん、俺」
クラなんてあだ名、久々に聞いたなぁ。中学のころ、つけたあだなだったっけ。すると、奈央はぎこちなく笑った。
「久しぶり、元気だった?」
「おう、元気」
「そっか」
少しだけ、うつむき奈央は顔を上げた。
「姫…まなみとは仲良くしてる?」
あ、と思った。奈央の中で俺の失敗はまだ終わってないのだと。いや、実際に別れてはいないけど。若干の罪悪感を覚え、俺の言葉もぎこちなかった。
「あんまり、うまくいってないんだ」
内緒だよ、と笑った。そっかあ、と奈央も笑ったふりをしていたが、驚きを隠せないようで、口が開いたままだった。

 奈央と別れたあと、なんとなく家が近いのかななんてことを考えながらコンビニへ向かった。
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