17のとしに
「誠也や春希、まなみ、初もこの概念を知ったらちょっと楽になるかもしれない!」
1歩、2歩先にいる奈央は弾けたように腕を広げている。普段の奈央は大人しく人の話を聞くイメージが染みついていたため、少しだけ意外な行動だなぁと思っていた。一方、春希や誠也というと半信半疑で奈央をからかっていた。本当か?宗教じゃないだろうな?とか。楽しみながら、図書室のパソコンに表示される検索エンジンでぱちぱちとキーボードを打ち、世界を知ってしまったのだ。
 そして、何度も繰り返し調べた情報から、俺らは少しずつ変わっていってしまったのだ。

 アダルトチルドレン

 「機能不全家庭で育つ子どもが特徴的な行動、思考、認知を持つと指摘された。子供の成育に悪影響を及ぼす親の元で育ち、成長してもなお、精神的影響を受けつづける人たち。」
 
 中学生の俺たちには当てはまらない言葉だったかもしれない。けれど、その概念は当時受験勉強や家庭環境、自身の複雑な心の状態に苦しんでいた俺たちを救った。そして幼く安直な俺らはアダルトチルドレンのタイプをもじり、お互いを呼ぶようになったのだ。
 部活動がなくなり、その分放課後や休日が暇になった中学3年生の俺らにとってはぞくぞくとするような楽しい案件だっただろう。苦そうな顔をしていた誠也も、画面にのめり込んでいた春希も、後ろにいつつも目を見開いていたまなみも、終始得意げな表情をしていた奈央も。…俺でさえ、どきどきしていたのだから。
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