17のとしに
 店を出、姫が何も買っていないことに気づく。
「まなみは何も買わないの?」
「しいて言えば浴衣が欲しいけど、お金ないから本買おうと思って」
「浴衣かぁ、確かに8月に入ったら夏祭りも花火大会もあるしね」
「そうそう」
姫の容姿は本当に姫と私が戸惑わないほど整っている。ふわふわとしたミディアム程度の癖毛。細い足に白い肌。身長は150センチ前半。そして笑顔も綺麗ときたものだ。そりゃクラだって彼女のことを知りたいと思うよなぁ。
 地元の夏祭りは8月の3日に行われる。もう7月末だからもうじき、という感じだが私は例年同様家にて涼んでいるつもりだったのに、逆に普段引きこもっている姫が夏祭りに行くということを聞いて内心驚いている。しかし逆の立場だったらたまには気分転換しに外にでたいくらいは思うかもしれない。クラと行くんだろうなぁと思うと胸がちくりと痛むが、10代残り少ない夏、彼氏と夏祭りに行くのに好きな浴衣が着られないのはかわいそうだなぁという気持ちもある。
「でもお母さんとかの浴衣はあるから欲張りはできないんだけどね」
「なるほどなぁ」
うんうんと姫が頷く。
 エスカレーターで2階の本屋へ向かい、本をかったり立ち読みをしたり、1階のフードコートに行ってたいやきを食べたり。何気ない話ができる中学3年生から高校1年生のあの頃に戻れた気がしていた。
< 54 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop