17のとしに
先ほどの表情は嘘のように無くなっていて、普段のレパートリーの少ない表情に戻っていた。
「うん、楽しくはやれたよ」
「よかったじゃん。やっぱ行ってみるものだよね」
「そこらへんも学校と一緒」
「そうだな」
これは苦笑だった。
「あと夏祭りが近いんだなってところは収穫だった」
「夏祭り、いくの」
「チャンスがあれば5人でまた行きたいなって思ってさ。ヒロの部活の予定も聞かないとわからないけど」
「…そうだな。誠也忙しそうだしなぁ」
ため息をつきながら、頬杖を突いた。表情が薄いままで考える人のような体勢はなんだかシュールで笑ってしまった。
「なんだよ」
「いや別に、シュールだなって思って」
「そっか。…そういえばリトは何か買ったの?」
「買った買った。Tシャツ。今度祭りのときにでも着ていく!」
「あんまり服買うとかないから意外」
少しばかり頭を右に傾けてぎこちなく笑った。暖かいなぁと思ってしまう。
「まあ、楽しみにしてるよ」

 会話の途切れた電車の空間。熟睡しているヒロ、スカスカの優先席で寝る学生。圏外区域の木々。どこか気づけなかったのだが、私はなんとなく違和感を感じていた。
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