17のとしに
 ヒロたちとは会場で待ち合わせというだけ特に何も決まっていない。そんなことを頭の隅っこで後悔しながら、あえて連絡はせず2人で彼らを探した。リトも連絡しようとは言わなかった。おそらくお祭りモードに楽観さが加えられているのだろう。今は2人で楽しもうと。じんわりと勝手な楽観さが胸の中を温めている気がした。
 ああこれこれもなにこれとリトははしゃいでいた。金魚すくいならぬスーパーボールすくいをしたり、焼きそばを家族用に買ったりして、普段よりもするすると金を消費する。
「歩き始めて10分経過した気がする」
リトはチョコバナナ頬張りながら、つぶやく。そろそろ楽観タイムも終わりか…少々残念に感じながら俺は携帯をポケットから取り出した。騒音で気づかなかったが、グループチャットを使い、俺らのことを探していたようだ。
「あ、ヒロたちもう20分前には来てるみたい」
「え」
「連絡きてたわ」
「まじ?どこにいるの?」
「…わかんない」
グループチャットに送ってみるものの、騒音でかき消されているのか全く返信が来ない。仕方なしと、ヒロに電話を掛ける。
 1コール目、2コール目、3コール目で出た。
「もしもし?小沢だけど」
「もしもし、奈央といるんでしょ?」
案の定電話先の音もざわざわとしてうまく聞き取れない。クラや姫がいるようないないような。
「いるよ、もちろん」
「どこ当たりからきたっけか。交通規制どこからかかってるっけ」
うーんとあたりを見渡す。
「公民館の近くかな」
「んじゃそこで待ってて。俺らでそっちに向かうから」
「あい」
電話が切れる前にヒロは誰かに話しかけ始めていたからもうすでに俺ら以外は揃っているのだろう。
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