17のとしに
「ロス、あんまりもの買ってなくない?何か思い出作りに買った方がいいよ」
正直祭りと言っても、誰かといることが楽しいんであり必ずしも物を買うから楽しめる訳では無い。それにあるものは食べ物ばかり。リトは思い出に残るかもしれないが…。そうだな、となだめるように俺は笑う。
「もう」
「ごめんって」

 町内会の男性がマイクのテストをしている。キーンとした音が響くのに毎年のことながらなつかしさを覚える。子供のころは毎回この音にうるさいと耳をふさいでいたっけな。今じゃ不快だなぁと思う程度だが。ヒロともクラとも合流のできない数分の間。ぐわぐわと現実から離れてしまったような感覚を覚えた。
「ねえ、リト」
「なに」
まだ綿あめ食べてるのかぁなんて少し小さい彼女を見ながら思ってい。もう真っ暗になった背景と点在する人口の光が彼女を普段とは違う雰囲気を醸し出していた。
「花火大会とかそんなんだったらよかったのにね」
「仕方ないよ、でもこれはこれで楽しいし」
ゆっくり瞬きをした。祭りの楽観さが彼女への気持ちを高めていく気がする。いけないなぁなんて思いながら。しばらく間がありリトは口を開いた。
「なんでさ、私のことリトって呼ぶのにヒロのこと誠也って呼ぶの。使わないならもう使わないでいいんだよ」
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