17のとしに
「だって仲のいい奴同クラなんだもん。誰かいない?」
「誰って…」
自分の教室の前に立ち、2人を眺めていた私に奈央の視線が止まった。
「まなみに借りたら?」
「えっ」
2人の視線が私に集中する。当時の私と春希の関係はほぼほぼ構築されていないに等しい。同じ委員会というつながりこそはあったが、特別友人ように仲が良いわけではなかった。奈央や初つながりでなんとなく話の輪に混ざれるというだけの感覚だったから。視線に私の頭はかちんこちんに凍り付いて思考を停止した。
「まなみ、今朝言ってなかったっけ?数学間違って一式持ってきちゃったって」
「ああ、うん。持ってきた。待ってて!」
奈央の柔らかい言葉には何とか反応ができた。そうだ、確か今日の時間割を勘違いして数学の一式を持ってきてしまっていたのを奈央は覚えていたんだ。少し暖かい気持ちになりつつ、スクールバッグから数学の教科書を取り出し、まなみに手渡した。
「ごめんねわざわざ。ほら、まなみ貸してくれるって」
「うああ、中川さんありがとう!」
「いえいえ」
春希は飛んで自分の教室へ戻っていってしまった。奈央はその姿に笑いながら、
「本当あわただしい人だよね、まなみありがとう」
「ううん、大丈夫。奈央も大変だったね」
 奈央は自分の力で自分を動かせたり、自分の力で他人を動かせたりすることができる人間だ。別に大きなことではない。自分で考えてそのために自分や他人を動かせるというだけの話だ。その力は私が中学3年生にもなっても未熟な部分だった。
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