17のとしに
「ご飯食べなって。せっかく用意したのに冷めちゃうじゃん、落ち着いて食べなよ」
俺の表情はどうなっていたか、わからない。全く仲介にもなっていなかったのだろうなぁと思う。母親はあからさまにチッと舌打ちをした。何も役に立たないと言うことと同義だろう。痛い、胸が痛い。本当にやめてくれ。
「はーあ、どうして反抗ばっかりするのか。家事なんかも全部君らに任せようかな、そうすればわかるよね」
心底呆れたような、表情と声だった。その言葉にショックと怒りの感情が、じわじわとわいてくる。右手に来た怒りの感情を届く範囲の白い壁に八つ当たりした。がんっ、と音がした。思いっきり殴ったからな。
「死ね」
多分、眉間にしわはより、ひどい顔になっていただろう。そのまま、俺は自室へ戻った。最低だ。思春期によくあるような問題行為をしてしまった。後悔か悲しさか分からない涙が止めどなく流れる。駄目だ、駄目だ、と半分に畳んである布団に顔を埋めていたのだ。

 こういうとき、俺はどうしていただろう。こんなに泣きたくなるほど悲しいとき、悔しいとき。俺はやっとの思いで携帯を取り、涙でゆがむ視界の中、奈央にメッセージを送っていた。中学校のころもよく彼女に相談していたなぁと思いながら。子供みたいに泣く自分をなだめながら、一晩を過ごしたのだ。

 翌朝、鏡を見た。目も赤く、どこかはれぼったい。昨晩3年分くらの涙を流してしまった気がする。それくらい泣いた。家族内の雰囲気は悪かったけれども、何とか朝食を取り登校することはできた。俺の所属している2年4組の教室の前に立つ。いつも通り、テストの終わったゆるみでざわざわと騒がしい。
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