17のとしに
「誠也の話きいた?」
「特に何も」
「誠也、なんか苦しんでるみたい」
ロスは少々顔をしかめた。
「なんでみんな具合悪くなるんだろ。俺も春希も悪くやってるよ」
「春希も?」
ロスはしまったという顔をした。確かに、目が腫れぼったし普段よりもけだるげな印象を受ける。誠也の話はあとにしよう。
「うん、春希はまなみのことで悩んでるみたい」
軽く頭をかすめたのは夏祭り、一緒にビンゴゲームをしていた2人の姿。「どれが今空いた?」とか「リーチどれくらいある?」とかそんな仲の良い会話をしていた、そんな記憶。そしてまなみが綺麗な浴衣を着ていたということくらい。
「まなみ、もしかして…」
夏の日の出来事を思い出しながら、私は左腕を切る動作をした。あの見立てが本当なら私はあのとき何か言うべきだったんだろうと思う。私も表情がこわばっていただろう。ロスは重く、頷いた。
「そう、結構情緒が不安定みたいでさ、心配になっちゃって春希も別れるに別れられないみたいな、そんなやつ」
「情緒不安定ねえ…。あんなににこにこしたのに」
「やっぱり関わりの薄い人には気づかれないのかもよ」
ちくっと胸が痛んだ。そうだ、中学の頃はたくさん話して仲も良かったけれど、一度関係が切れているから。そりゃあそうだ。
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