17のとしに
「あとだけど」
もうすぐ、分かれ道だった。ロスの声に力が入り、若干こもっていた。足が止まる。
「忘れたかもしれないけど、俺もまだ去年のことは気にしてる」
「去年…」
私も足を止めてロスの顔を確認した。何とも形容しづらい、くしゃっとなった表情をしていた。バクバクと心臓が脈打つ。
「ごめん…」
その言葉しかとっさに出すことができない。ロスの表情を直接見ることもできなくなっていた。ロスはしぼり出したような声で呟いた。
「割り切れて無くてごめん」

 去年の秋から冬頃、私とロスは付き合っていた。ロスから伝えられた気持ちを私が承諾した形だ。誠也にももちろん春希やまなみにも伝えていない。少しだけの間の、私にとって無かったことにしてしまっている思い出だ。別れはロスから告げ、友達に戻りたいということで今の関係に戻った。戻った、というよりも新たな関係になったと言う方が近い。何が悪かったのか私にとってよく分からなかったが、友達だった頃より仲良く、恋人だった頃より距離を置くという関係に魅せられ、私は変わらずロスと関わっていた。
 忘れかけていたが、もうすぐ1年がたとうとしているのはロスにとって大きな意味があるだろう、一般的にはそう考えるだろう。
「私、仲良くできるんならこの関係でも恋人の関係でもいいって思っちゃったんだよね。だから、私は全然ロスとの関係苦痛じゃないけど、ロスは苦痛なの?」
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