17のとしに
「別に、苦痛じゃ無いけど。たまに思い出すなぁって。それに1年たつし。それだけ」
「そっか」
こんなことしか言えない自分がもどかしい。けれど数秒後には歩き出し、普段通りのロスに戻っていた。
「それよりもまなみの事考えよ」
「そうだね、私たち暇だから連れ出せばいいんじゃない?」
「…まなみ俺のこと苦手じゃないかな」
口元をゆがめる。
「そんな事無いと思うけどな。だって、グループチャット作るときだってまなみから初に言ったんでしょ?」
「うん」
「なら大丈夫じゃない」
そんなに楽観的で大丈夫かという表情をしてこちらを見る。私は何となく大丈夫な気がした。まなみは中学生の頃仲良くしていたし、春、夏の出来事のこともあるし。
「んじゃ、俺からも言ってみるか」
「お願い」
薄くロスはほほえんだ。先ほどの不穏な空気が消化された気がした。ほとんど何となくではあるし、根拠は何もないのだが。

 その後少しだけ会ったりもした。何度か会ってもその柔らかい笑顔は変わらず、何かが垣間見えるわけでも無かった。強いて言うなら、気をつけていていれば所々手首の傷が見え隠れするくらい。次第に疑いが確信になるような、そんな感覚。
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