ここからはじまる恋

桜の季節が過ぎ、初夏を思わせる陽射しに包まれる。三日間のゴールデンウィークは、退屈だったわりにはあっという間に終わってしまった。

そんな、金曜日の夜。今夜は、家族揃っての外食。月に一回、お父さんが企画してくれる。さすがの由良も、この日は欠席しない。

今夜のごちそうは、和食だそうで。お父さんは最近、‘‘B.C. square TOKYO’’がお気に入りなのか、そこの店をチョイスする。

まぁ、歩いて行ける距離だし、ね? まさか、余裕があるふうにみせて、ライバル歯科医院を気にしているのだろうか。

「この店は、とてもおいしいよ」

お父さんが足を止めた。元カレと来た、天ぷら専門店だし……。

高級な雰囲気漂う店内は、やっぱり落ち着かない。でも、その店内に見合った、おいしい天ぷらたちが、私の胃袋を満たしてくれる。

「紗良、明日なにか予定はあるのか?」

「ひとり身だし、なにもないよ」

お父さんに突然、聞かれたものだから、素直に答えてしまった。

「そうか、ひとり身か……」

緩む頬を隠しもしない、お父さん。うれしいような、哀しいような複雑な気分。

「明日、なにかあるの?」

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