ここからはじまる恋
Bar ブルーヘブン
①
空さんに出会ってから一週間、がまんした。名刺をもらってすぐに行ったら、尻軽女だと思われそうで。
飲むなら土曜日の夜と決めていた。両親には『友だちと飲みに行くから』と言って、二十時過ぎに家を出た。Barは、十七時からオープンだけれど、あんまり早くに行くのは、躊躇われた。
‘‘B.C. square TOKYO’’の、大きなエレベーターホールで、専用エレベーターが来るのを待つ。一緒に乗り込んだ人たちは、レストランかBarに行くのだろう。あの、女の子三人組は、もしかしたらBarに行くのかもしれない……。
長い沈黙のあと、ほとんどの人たちが五十三階で降りた。案の定、女の子三人組と私だけになり、五十四階に到着した。
私のことなんか見向きもせず、Barブルーヘブンの扉を開けて、中へ入っていった。
すぐ後に入るのは、入りづらい。深呼吸を繰り返してから、その扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
カウンターから、渋い声。初めて来たBarは、大人の世界……。
「いらっしゃいませ。紗良さん、来てくださったんですね!」
聞き覚えのある声に、胸が高鳴る。柔らかく優しい声が、私をカウンターに座るよう、促した。
「こんばんは」
とりあえず、挨拶をして座る。メニュー表もなにもなく、どう注文していいのやら。
「Barは初めてですか?」
落ち着きなく、視線をあちこちに飛ばす私を見て、空さんが察した。
「……はい。なんだか大人の雰囲気で、緊張します」
素直に気持ちを伝えると、優しい笑みを返された。
「紗良さん、お酒は強いですか?」
さっきから、気になる。空さんは、私を名前で呼んでいる……。
「強くはないです」
「わかりました。では、甘く、優しい味にしましょう」
飲むなら土曜日の夜と決めていた。両親には『友だちと飲みに行くから』と言って、二十時過ぎに家を出た。Barは、十七時からオープンだけれど、あんまり早くに行くのは、躊躇われた。
‘‘B.C. square TOKYO’’の、大きなエレベーターホールで、専用エレベーターが来るのを待つ。一緒に乗り込んだ人たちは、レストランかBarに行くのだろう。あの、女の子三人組は、もしかしたらBarに行くのかもしれない……。
長い沈黙のあと、ほとんどの人たちが五十三階で降りた。案の定、女の子三人組と私だけになり、五十四階に到着した。
私のことなんか見向きもせず、Barブルーヘブンの扉を開けて、中へ入っていった。
すぐ後に入るのは、入りづらい。深呼吸を繰り返してから、その扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
カウンターから、渋い声。初めて来たBarは、大人の世界……。
「いらっしゃいませ。紗良さん、来てくださったんですね!」
聞き覚えのある声に、胸が高鳴る。柔らかく優しい声が、私をカウンターに座るよう、促した。
「こんばんは」
とりあえず、挨拶をして座る。メニュー表もなにもなく、どう注文していいのやら。
「Barは初めてですか?」
落ち着きなく、視線をあちこちに飛ばす私を見て、空さんが察した。
「……はい。なんだか大人の雰囲気で、緊張します」
素直に気持ちを伝えると、優しい笑みを返された。
「紗良さん、お酒は強いですか?」
さっきから、気になる。空さんは、私を名前で呼んでいる……。
「強くはないです」
「わかりました。では、甘く、優しい味にしましょう」