ここからはじまる恋
「強くはないっておっしゃっていたのに、結構、いけるんですね」

空さんのように甘く、優しいカクテルは、気がつけばグラスを空にしていた。

「次は、先ほどと違うテイストのものをお持ちします」

「……お願いします」

カクテル、三杯目。普段は二杯目くらいでやめて、ソフトドリンクにするのに。

大人の階段を一歩、昇った気分。

「お待たせいたしました。ブラック・ルシアンです」

「ブラック・ルシアン……なんだかかっこいい名前ですね」

グラスに充たされた、琥珀色のカクテル。フルーツやフラワーで飾られていない、シンプルなカクテル。辛口のように見えるけれど……ゆっくりと口にする。

コーヒーリキュールの香りと甘い風味。ブラック・ルシアンは、見た目とは違い、甘くて飲みやすい。

「食後のデザートのようなカクテルです。飲みやすいでしょう?」

「ええ、とても……」

飲みやすいですが……飲み干せるかな?

さっきから、視界がぼんやりしてきているのですが……。

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