ここからはじまる恋

お父さんと一緒に家に入ると、コーヒーの香りに包まれた。

「おかえりなさい、紗良」

お母さんも、心配している感じはなく、淹れたてのコーヒーをテーブルに並べた。

「どうしてふたりとも、私を怒らないの?」

椅子に座りながら、ふたりを交互にみつめた。

「新庄先生から連絡をいただいてね。紗良、少し飲み過ぎたみたいだな」

呆れ顔で、それでいて笑顔で、お父さんが言った。

「連絡?」

「ああ。空さんのBarで飲み過ぎたから、明日の朝、送ります……って」

たしかに。新庄先生の言っていることは、正しい。でも、疑問点だらけだ。

香り高いコーヒーを口にしながら、頭の中を整理してみる。

まず、なぜ新庄先生が私の自宅と連絡先を知っているのか……。

空さんから聞いた? 一度、新庄先生の歯科医院に行ったから、住所や連絡先はわかるもんね。

そう考えてもひとつ、引っかかること。

なぜ、空さんではなく、わざわざ新庄先生が両親に連絡をして、私を送り届けてくれたのか……。



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