ここからはじまる恋
十二時半より少し前。身支度を済ませると、慌てて家を飛び出した。

空さんが私をランチに誘ってくれるだなんて、夢のよう。私をBarに誘ってくれたのは、売上のこともあるのかなと思ったけれど……。私をランチに誘っても、空さんは何の得にもならない。

と、いうことは。ひょっとして、ひょっとするかも!? 心も弾めば、身体も弾む。スキップしたい気持ちをなんとか抑えながら、待ち合わせ場所へと向かった。

「紗良さん」

私の姿をみつけると、大きく手を振って、優しい笑みを浮かべる、空さん。

それだけで、お腹いっぱい、胸いっぱいです!

「来てくださって、ありがとうございます。紗良さんは、何がお好きですか?」

私は……空さんが。なんて、言えるはずもない。

「好き嫌いはないので、なんでも」

「そうですか。そうしたら……パスタはいかがですか?」

大きくうなずくと、レストランフロアに向かった。ランチタイムということもあり、フロアは混雑していた。

「すみません。少し待たないといけませんが」

「大丈夫です。午後の診察は三時からですので」

「よかった」

安心したように見せる笑顔。空さんの笑みは、どれもこれも一級品!

「先日は、すみませんでした。少し強いお酒を、飲ませてしまいまして……」

申し訳なさそうな表情も素敵。思わず見惚れてしまった。

「いえ……。あの夜のこと、途中から記憶にないんですが……」

なぜ、新庄先生が連絡をしてくれたのか。気になって、それとなく確かめようとした。

「あの夜のこと、ですね」

ふっと思い出し笑いをしても、いやらしい感じはなく、むしろ上品だったりする。


< 37 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop