ここからはじまる恋

私の気持ちに気づいていたんだ? それなのに、どうしてこんな強引に誘うの? 涙目で、空をにらみつけた。

「好きじゃなくても、かまわないよ!」

さっきまでの甘い声とは違う。半ば怒鳴るように言うと、私の腕を掴んで、ベッドに押し倒した。

「やだっ! やめて!」

小柄で細身の空だけれど、力はある。ベッドに押し倒された私は、必死に抵抗した。こんな空とは、関係を持ちたくはない。

首筋に舌を這われて、ゾクッとすると同時に涙が溢れた。こんなことになるのなら、新庄先生の忠告を受け入れていればよかった。そうしたら傷つくこと、なかったのに……。

もう、無駄な抵抗は止めよう。フッと力を抜いた。

「いい子だね、紗良。最初からそうすればよかったんだ」

さっきまで怒鳴っていたとは思えないような、甘い声。言うことを聞けば、ひどい扱いはされずに済むかもしれない。

でも、心身ともに大きな傷ができるのは、間違いない。

空は私を、愛しているから抱くわけではない。欲望が満たされたら、それでいいんだ。

『空には、気をつけろ』

新庄先生の忠告の意味に、今さら気がつくだなんて……。

バカだな、私。

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