ここからはじまる恋
翌日は、お父さんとデート。昼間っから寿司だなんて、かなりの贅沢。こんな落ち着いた、大人のデートをしたいのなら、うんと年の離れた大人の男性に出会わないと。

「どうしたの? ぼんやりして」

私が箸をつけないと、お父さんは食べようとはしない。

「昼間っから、豪華だなぁと思って」

「遠慮しているのか? いいんだよ。ここの寿司は、安くておいしいから」

たしかに、このネタ、このボリュームで三千円は安いのかもしれない。でも、ランチに三千円は……。

「いただきます」

相手がお父さんだから、申し訳なく思いながらも、遠慮なくいただける。

あ。やっぱり私、うんと年の離れた大人の男性とはお付き合いできないかも。こんな豪華なランチ、息が詰まっちゃう。

「おいしい」

私の笑顔を確認してから、お父さんが箸をつける。

「おいしいな」

その笑顔に、やっぱりお父さんみたいな大人の男性がいいなと思う。

ああ。私って、優柔不断だ。


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