ここからはじまる恋
新庄先生なら、大丈夫だろう。そう思いながらも、ペットボトルをギュッと握りしめながら、中に入った。

モノトーンのシンプルな室内。ソファに座るよう促され、会釈をして座ると、私から少し離れた隣に、新庄先生が座った。なんだか喉がカラカラになり、ペットボトルの水で潤した。

「弟は、私がやる事なす事、気に入らないらしい」

ポツリと話を始めた新庄先生に、視線を送った。その横顔は、まるで彫刻のように美しくみえた。

「今回のお見合いも、そうだ」

「お見合いが……気に入らない?」

恐る恐る、質問してみる。やっと、話ができるくらいに落ち着いてきた。

「私の相手が」

そこまで言って、口を閉ざした。

「……私が、気に入らない……ってことですか?」

「いや、そうじゃない」

口元に手を当てる仕草が、やけにさまになっている。タイプじゃないけれど、イケメンはなにをしても絵になるな、と、ぼんやりとみつめた。

「あなたが、かわいい人だから」

「えっ!?」

思いもよらないひと言に、間の抜けた声をあげると、鼻で笑われた。

「あなたは、自分のことをよくご存知ないようだ」


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