ここからはじまる恋

新庄先生の言うことが全く理解できず、瞬きを繰り返した。頭の中が混乱すると、ついしてしまう癖だ。

「弟は、私のお見合い相手がかわいい女性だったのが、気に入らなかったようです」

自分自身、かわいいなんて思ったことがない。過去に私と付き合ってくれた人たちは、私みたいな女性がタイプのもの好きだと思っていた。

新庄先生の言葉が信じられず、ぽかんと口を開けるばかりだ。

「それであなたを誘惑して、わざと強い酒を出して、酔わせた。二度目は、ノンアルコールと言いながら、アルコールを混ぜて、酔わせた。三度目は、否が応でもあなたを奪おうとした」

新庄先生は、空がやることをすべてお見通しで、私を危険から守ってくれていたんだ? そうとは知らずに私、空を好きになるなんて……。空は、私を好きなんじゃなくて、ただ単に、新庄先生から私を奪いたかっただけなのに。

「……すみませんでした」

忠告を聞かなかったにもかかわらず、私を守ってくれていた新庄先生に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「いや。謝らないといけないのは、私の方です」

新庄先生は、なにも悪いところなんてない。謝る必要なんてないのに。

「弟を、好きだったんでしょう?」

真剣なまなざしを向けられたのに、噴き出し笑いをしてしまった。

「あんな手荒な真似されたら、千年の恋も冷めますよ?」

「ああ、そうですね」

そうつぶやくとやっと、自然に笑ってくれた。イケメンは、笑っている方がさらに素敵だ。


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