メジャースプーンをあげよう

(っていうか今気になるのはそっちじゃなくて)

「それであの…大変失礼ですけど、改めてお名前をうかがってもよろしいですか?」
「……えっ、あ」

 ぽかんとしたような顔になっていたミスター結構は我に返ったような、ハッと肩をびくつかせて私を見た。

(え、なにその顔)
(もしかして何か気に障るようなこと言ったかな…?)

 右手でジャケットの胸ポケットを探り、鈍い銀に光る四角い入れ物から節だけが太い指で1枚の紙を取り出した。
 一連の流れがあまりに綺麗で、つい見惚れる。

「……?」

 だからその紙が私の目の前に差し出されていたことに気付くのに、少し時間がかかった。

「あ! ごめんなさい、ありがとうございます」

 両手で受け取ったそれに書いてあったのは。



< 17 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop