メジャースプーンをあげよう
【都 睦月
Miyako Mutsuki】
「都……さん」
「社内外問わず睦月と呼ばれているのでそちらで結構です。……都と呼ばれるのは個人的に好きではないので」
「……睦月さん」
「ええ。それで結構です。名乗らずにいた非礼を重ねておわび」
そう言ってまた頭を下げようとする睦月さんを慌てて止める。
「だからいいんですってば」
「ですが」
なんかわかってきた。
睦月さんは細かいのでも過敏すぎるわけでも、ましてやクレーマーなわけでもない。
(ものすっごい生真面目なんだ)
「じゃあこの件はお互いに悪かったってことでおさめてください!」
思わず出した大声に、今度こそ睦月さんはキョトンとした。
目をまるくして、口もあきっぱなしで。