メジャースプーンをあげよう
でも子機は奥の事務所に戻さなければいけないので、とりあえず受け取る。
「ありがとーいつきちゃん。で、18時にフロア15ねー」
「聞こえてました」
「あっそう? よかった」
「よかった、じゃないですよ…」
「ってことでいつきちゃん、ポット準備して」
「……はい」
「いいお返事ー」
ハイ一丁、と出来上がったクロックムッシュをプレートにおいた上坂くんの手は止まらない。
口もよく動くのにそれ以上に手際が良い。
初めて私が「ミスター結構」こと睦月さんと会話をして、早1か月。
平日、平均して2日に1回はフロア15『Ad Corp.』からのコーヒーポットサービス依頼が来るようになった。
それまでは多くても週に1度だったらしい。
そして毎回出向くのも回収も私になってしまっていた。