メジャースプーンをあげよう

 今は17時15分。
 外に列をなすような本格的な繁忙時間というわけでもないけど、空いてるわけでもない。
 でもひっきりなしにお客様がやってきて、ひと組ふた組待ったりする。
 つまり微妙。

(っていうか)

「結衣子さん……そのご指名ってやめてください」
「えー ?なんでー?」
「指名してくるのは上坂くんと結衣子さんだからです」

 この1か月にフロア15から来るコーヒーポットサービスの依頼。
 毎回私にまわしてくるのは他でもない、このふたりだった。
 社員の結衣子さんと、バイトリーダーの上坂くん。
 平日シフトがほぼ丸かぶりと言えるのは私たち3人で、だからこそ平日に依頼される今件を全て私に投げてくるのはこのふたり。

「えー? だってさ? ね? 上坂くん」
「ですよねー? 皆瀬さん」
「結託されるとかなわないからほんとやめてください」

 ふたりとも仕事も出来るけど、口でもかなわない。


 
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