メジャースプーンをあげよう
「え? なんです?」
私の顔を見て驚いたのか、今度は睦月さんの目が開いた。
さっきまでの表情はあっという間になくなって、幻だったのと思わずにはいられないくらい。
(すっごい、やさしいっていうか…)
初めて見た笑顔は子供みたいに可愛かった。
でもついさっき、本当に今さっき見たのは―――
(なに? わかんない)
(わかんないけど、心臓がうるさい)
どんな風にとか形容できないくらいに優しくて、ただただ心臓がうるさい。
見た瞬間から頭から離れない。そういう顔をしてた。
「……あ、申し訳ない。偉そうな発言でした」
あわてて顔を逸らした私が気を悪くしたと思ったのか、睦月さんは頭を下げはじめる。