メジャースプーンをあげよう
「っていうかさ、マジでミスター結構ってどんなヤツなの?」
「………」
「あー答えてくれないんだー。ね、皆瀬さん、どんな人なんです?」
「私1回しか応対したことないのよねえ」
「顔とか覚えてないんですか?」
「顔ぉ? 悪くないわねって思ったような気はするけどー」
「けど?」
「セリフがインパクト強すぎて顔とかふっとんだ」
声をはさまないまま黙々と片付ける私をチラチラみながら、上坂くんと結衣子さんは楽しそうに続ける。
「結構です」
きれいにハモったふたりの声を私はあえて無視する。
何を言ったってからかわれる結果は目に見えてるからだ。
「キッチリしてんすかねー?」
「じゃないの? 仕事するにはいいんだろうけどねえ」
「フロア15って広告代理店でしたよね」
「かなりの大手よ」
そこで急に会話が止まる。