メジャースプーンをあげよう
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「なんかあったでしょ」
テイクアウトのお客様に「ありがとうございました」と笑顔で一礼し終えたところで、真後ろから声がした。
コーヒーの薫りを消すことがない、近くに寄らないとわからないほどよく甘い香水の香り。
「背後霊かと思いました結衣子さん」
「背後霊になるならもっといい男にするっての」
「知ってました」
「言うわね」
「相手が結衣子さんですから」
私がキャッシャーを閉めるのを待って、結衣子さんはもう1度言う。
「なんかあったでしょ」
「何がです?」
「ア・レ・と」
結衣子さんはたっぷり意味ありげな笑顔を浮かべ、親指でキッチンの方向を差した。
そっちに誰がいるのかは知っている。でも。
(古いです結衣子さん)
「……特に何もないですけど」
―――睦月さんと因縁があることがわかったのは3日前の金曜日。
土日は基本シフトに入らない私と上坂くんが当然会うこともなく、月曜の今日、久しぶりに会った。