メジャースプーンをあげよう

 駅で妙な別れ方をしたような気がするから、日が開いた故にどうしようか少し悩んだのも本当。
 でも朝会った時、上坂くんが「おっはよ」といつもと同じに挨拶してくれたのを受けて、年上どころかいい大人の私がこんなんでどうするといつものように振る舞っているつもりだったんだけど。

「絶対ウッソー。わかるよ? 年の功的なカンってやつで」
「そんな変わんないじゃないですか」
「アラ嬉しい。でもいつきちゃん28でしょ? 四捨五入で30と40じゃ全然違うからね?あっ今度カラオケ行かない? 絶望するくらいの世代の違いを」
「ストップストップ結衣子さん」

 結衣子さんは出来る人で、お客様が店内に居る時レジ含めてホールでの無駄話は滅多にしない。
 だからこんなにしゃべるのも珍しい。 
 声をひそめているとは言ってもこれは無駄話だしと抑えつつ、妙なことに気付いた。

「そういや結衣子さん、なんでずっと後ろにいるんですか」
「あ、そーそー。レジ。交代だから」
「え?」
「お呼びよ」

 そしてまた、結衣子さんは親指をキッチンに向ける。



< 57 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop