メジャースプーンをあげよう

 クルクルと筒のようにしてから、紐でそれを巻いて仕舞う。
 初めて教わった時「えっ」と口に出した私を見て「おもろいっしょ」と笑ったのは上坂くんだった。

「どーしたの」
「えっ」
「それ」

 火曜日。
 クローズ作業も終わったところで上坂くんは呆れたように指を差す。
 そちらへ視線を動かすと、外したエプロンをキッチリ折りたたみはじめている自分の手を知った。

「あ! あはは!? 癖ですかね?」
「今さら?」
「そ、そうです、たぶん…?」
「……なーんか変だよね」

 そう言う上坂くんの方が、いつもより少し変なことを私は言わない。
 たぶん上坂くん自身も気付いていて、それでもいつも通りにしようと接してくれていることもわかってるから。
 あれから私は聞き直すことも出来なくて、上坂くんもあの話題に触れようとしなかった。
 睦月さんのことも、私に何か言ったことも。

(……本当は、もしかしてって思うこともあるけど)
(勘違いだったらイタすぎるし第一こんな年下の子がまさか)

「いつきちゃん」
「あっはい?」

 振り返ると、上坂くんが目の前に立っている。


 
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