メジャースプーンをあげよう
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「ではごゆっくりどうぞ」
「どうもー」
上坂くんの前にクリームパスタを置いた女性店員は極上の笑顔を向けてから、頭を下げる。
いただきまーすと嬉しそうにフォークを持った上坂くんは、こう見るとやっぱりまだまだ若い。
綺麗にフォークに巻かれたパスタを口いっぱい頬張り、満足げに頷く。
そして私の手元を指して言った。
「てかさーいつきちゃん、なんでいきなりスイーツなの」
「……話がしたいっていうから来たんですよ」
「そーだけどさー。腹が減ってはなんとやらでしょ」
(これは戦なの……?)
「……お昼食べたのが夕方近くだったんで、おなか空いてないんです」
「ダイエットなら逆効果だよって言おうと思ったんだけど」
「食事抜きは肌に悪いからしません」
「へえー! なんかさすが」
がっつりパスタのセットを頼んだ上坂くんとは反対に、私はコーヒーとケーキのセットのみ。
飲み物だけでも良かったけど、それだと間が持たない。
「話ってなんですか」
「せっかちだなー。ま、いっけど」
上坂くんはすでに半分以上平らげていた。早い。やっぱり若い。
睦月さんとはゆったり向き合って食事をしたから、何だろう……若いという感想しか浮かばない。
「今さら確認だけどさ。あいつと付き合ってんだよね?」
「……はい」
「何その微妙な間」
(だって。そうだと思うけど)
付き合ってほしいとか好きだとか言われていないけど、手を繋がれたり指をからめられたり。
上坂くんを牽制したことだって、結衣子さん曰く「独占欲」というものになる。
好意を態度で示されていると思う。
だから関係を聞かれたら、恋人ってことだと思う。
(思う、ばっかりだけど)
不安は不思議となかった。