初恋に捧げる私の恋の歌

出会い

その後は警察に追われながら逃げ切り始めの溜まり場に戻った。




私はあまり話せなかったけどその代わり柚莉先輩や直哉先輩がたくさん話しかけてくれた。



「愛生、本当に大丈夫?」




「はい、ここまでで大丈夫です。」




「そう」




そう言って柚莉先輩は直哉さんの車に乗って帰って行った。



私はというと溜まり場でおろしてもらった。



理由は海に行きたいからだ。



あの、綺麗な星と月を見たかったから。




私は溜まり場の塀を越えてゆっくりと浜辺を歩く。




さっきの砂浜の感じが忘れられない。




私は堤防として立ててある松の木の下に靴を置くと砂浜を歩く。




サク、サクといい音を立てて砂が動く。




少しずつ海に近づき波が打ち寄せるギリギリを歩く。




海に星と月が映りゆらゆらと揺れる。




綺麗、触りたい、でも、みんながいるからまだダメ。




そう思いながらゆっくりと進む。



頭の中に月と星をイメージした音楽が浮かんで来る。




「♪〜♫〜〜♬〜♩〜〜〜〜」




歌声が海に飲み込まれて行く。



目をつぶってゆっくりと歌いながら歩く。




サクサクという砂の音がリズムを刻む。




1人だけの、観客のいない演奏会



楽器は私の声とこの砂の音と波の音だけ。




いつも親がいないとき、寂しいときに歌った。


自分の声が嫌いでは無かったのが幸いだ。




まだ、誰にも聞かせたことがない。




親はもちろん凛香や明麗紗や香野葉や先輩だって




カラオケは行ったことがあるけどみんなではしゃいでるのを見るだけ。



歌は歌わない。




何となくだが誰にも聞かせてない。



歌い終わってから目を開く。




海に月と星が映り空にも月と星がある。



宝石箱をひっくり返したように星が広がっている。



フーと息を吐き出せば白い息が宙を舞う。



むかし、母とまだ仲よかった頃、この息は妖精さんが周りにいるからって教えられたっけ。


その時は純粋で素直にそれを信じていた。




いつまでだっけ、母親の言葉を信じれてたの
< 16 / 36 >

この作品をシェア

pagetop