自殺カタログ
「これ可愛いじゃん」


と月乃や百花がしゃべりかけても返事をしない。


逆に「黙って」と一括されている。


それほど好きなブランド服なのだ。


しばらくカタログに釘付けになっていたアンミは、最後のページまで見終えて大きく息を吐き出した。


よほど注目して読んでいたようで、肩をグルグルと回す。


そして再びカタログに視線を落とした。


どうやら気に入った商品が何点かあったようで、カタログに折り目を付けている。


「でもさ、通販ってちょっと怖くない?」


折り目をつけながらアンミが言う。


「そう? でもそのブランドの服はよく買ってるじゃん」


と、月乃が返事をする。


「そうだけどさ、いつもちゃんと手に取って確認して買うもん」


「そっか。通販になるとわかんないもんねぇ」


その会話に耳をそばだてるあたし。


嫌な方向に話が進んでいるが、きっと大丈夫だ。


だってアンミはもうペンを持っているのだから。


「あ、そうだ。ためしに光が買ってみてよ」


不意に名前を呼ばれた土屋光(ツチヤ ヒカル)が目を見開いてアンミを見る。
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