自殺カタログ
月乃は困ったように眉を下げるばかりだ。


「お前を二番目の女にしてやるよ」


あたしは自分の耳を疑った。


今龍輝はなんて言った?


月乃は大きく目を見開いて、ポカンと口を開けて龍輝を見ている。


月乃もまたあたしと同じような気持ちでいるようだ。


「これでクラスでの立場もアンミの次になるんだろ?」


そう言い、タバコをくわえたまま月乃髪の毛を撫でた。


黒く艶やかな髪の毛がいびつに揺れる。


「そ、そんなの……望んでないから」


そう言う月乃の声はひどく震えていた。


とんでもない相手に勘違いをされているという恐怖が全身にあふれていた。


龍輝だって、百花のデマを100%信じたわけじゃないだろう。


ただ月乃に手を出して遊びたいだけなんだ。


「なんだよ、俺の好意を無駄にするのか?」


龍輝のその言葉に月乃はとうとう何も言えなくなってしまった。


青ざめて、ただ下を向いて震えている月乃。


アンミよりもたちの悪い龍輝に嫌われれば、その拳が飛んでくる可能性がある。


使い方を間違えれば、人の命まで奪ってしまう拳に誰もが震えあがっている。


「心配すんなよ、アンミには黙っててやるから」


龍輝はそう言うと、タバコをプッと吐き捨てて月乃の首筋に顔をうずめた。


白くしなやかな首筋が龍輝の唇に吸われるのをみた。


月乃は今にも気絶しそうな真っ青な顔で、涙を浮かべていたのだった。
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