自殺カタログ
「大丈夫？」


あたしは笑い出したい気持ちを押し殺して月乃に手を差し出す。


月乃は下から睨み上げて来た。


クラスカースト最下位のあたしの手なんて、きっと死んでも握らないんだろう。


「芽衣、こんな子ほっといて帰ろう。あたしたちの仲間になればまだ救いがあったかもしれないのにね」


理央が月乃を憐れむように見て、そう言った。


「そうだよね。あたしたちにはアンミにも勝てるような要素があるのにねぇ」


あたしはニヤニヤと笑いながら月乃を見た。


月乃は相変わらずあたしを睨み上げている。


しかし、『アンミにも勝てる』と発言した事で月乃の表情は少しだけ変化していた。


「あんたたちなんか……ただのイジメられっこじゃない」


月乃が苦しげな声でそう言った。


「ただのイジメられっ子がずっと我慢し続けてると思う？」


あたしは月乃を見おろして言う。


「イジメられた経験がある人間は、相手を殺してしまいたいとまで願って日々を過ごすんだよ。何度も何度もアンミやあんたを頭の中で殺してきた。そんなあたしが、アンミに負けると思うの？」


強い口調でそう言うと、月乃がひるんだ。


表情が和らぎ、少しだけ怯えを含んだ瞳であたしを見る。
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