自殺カタログ
あのカタログは確実に本人だけを自殺に追いやるのだ。


その恐ろしさを目の当たりにした気分だった。


「でも、光は生きてるじゃん!」


月乃がなにかにすがるようにそう言った。


その様子は見ているだけで痛々しく感じられる。


今の光を見れば誰でも絶望的な気分になるはずだ。


家族たちが何の会話もしていなかったのも、絶望に打ちひしがれていたからに違いない。


「無理だよ、もう」


あたしがそう言った時だった。


突然病室の中が騒がしくなった。


大きな声で光を呼ぶ声が聞こえてきて、慌てて医者が病室に飛び込んでいく。


一気にその場が騒然となるのがわかった。


あたしや理央も何も言えなかった。


ドアが開いている微かな隙間から中の様子うかがうしかできない。


「心臓マッサージを!」


そんな声が聞こえてくる。


もうする光の命が消えるのだろう。


分かっていたことだけれど、いざその現場に居合わせると不思議な気持ちになる。


可愛そうだとか、悲しいだなんて思わない。


ただただ不思議なのだ。
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