自殺カタログ
☆☆☆

お父さんの放浪癖が爆発したおかげで、家にはまだしばらくお母さんがいてくれることになった。


離婚が決まった時にどうしてお母さんについて行かなかったんだろうと考えた。


そういえばあの時、お父さんは泣きんがら「俺と一緒にいてくれ」と言ったんだった。


そんなお父さんを見て、お母さんも「一緒にいてあげてね」と、言ったんだ。


そんなに寂しいのなら一緒にいてあげよう。


そう思ってお父さんと暮らし始めたが、お父さんはいつでも家にいなかった。


そして外であの女といい関係になって、さっさと再婚してしまったのだ。


寂しい思いと同時に家の家事すべてを背負わされることになるなんて、あの頃は思ってもいなかった。


ロクな思い出がない事に気が付いて、あたしは頭を切り替えた。


晃紀との帰り道を思い出す。


楽しかった時間に顔がにやけて来る。


この気持ちを誰かに伝えたいと思った時、すぐに理央の顔がうかんできた。


あたしが本気で晃紀の事を好きになったと言うと、理央は驚くだろうか。


半分期待しつつ、あたしは今日の出来事を理央にメールで報告した。


すると、すぐに返事があった。


『芽衣は少し甘すぎるよ? 晃紀は必要だからまだ殺さないだけ。わかってる?』


そんなキツイ返事にあたしは顔をしかめた。


まだ殺さないだけ。


という部分を思わず読み飛ばす。
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