自殺カタログ
あたしも、アンミと同じようにしばらく呆然としてその場に突っ立っていたっけ。


あの時あたしの机と椅子はトイレに移動されていたのだ。


「トイレじゃない?」


教えるつもりなんてなかったけれど、つい口に出てしまった。


アンミがゆっくりとあたしに視線を向けた。


目の下は真っ黒なクマができていて、生気がない。


クラスカースト上位だった女が下位まで転落すると、1日でこんなにも変わってしまうものなのかと、目を疑った。


「あたしの時はトイレに移動されてたけど?」


そう言うと、アンミは少しだけ目を大きく開いた。


自分が過去に行っていたイジメを思い出したのかもしれない。


アンミはその場に鞄を置いて教室を出ようとする。


あたしは慌ててアンミを止めた。


アンミは自分がしてきたことを忘れてしまったのだろうか?


机を取りに行くために鞄を置いて行けば、今度はその鞄が捨てられるのだ。


「鞄は持って行きなよ」


そう言うあたしにアンミは一瞬とまどった様子を見せた。


その後、思い出したようにあたしを見て小さく頷き、鞄を手に取った。
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