自殺カタログ
アンミはすごく興奮しているようで、あたしについて歩きながらもずっと睨まれているのがわかった。


「どうしてあんな動画を撮ったの」


登り切った時、アンミがそう聞いて来た。


あたしは振り返り、アンミを見る。


一段下がった場所にいるから、余計に小さく見えた。


「それはこっちのセリフ」


あたしは冷たく言いかえす。


ここであたしがアンミの肩を押せば、アンミは石段から落ちてしまうだろう。


そう思ったが、手は出さない。


そんなにわかりやすい方法はとらない。


「行くよ、アンミ」


あたしはそう言ってアンミに手を伸ばした。


不覚、だった。


まさかアンミがナイフを忍ばせているなんて思いもしなかった。


アンミはあたしの手を握るふりをして、ナイフであたしの手のひらを切り裂いたのだ。


咄嗟の事で何が起こったのか理解できなかった。


ただ手のひらに何かがあたる感触があって、確認すると赤い血がにじみ出て来た。


そしてようやく痛みを感じ、切られたのだと気が付いた。


あたしはその場に尻餅をついてしまった。


アンミが小型のナイフを振りかざしているのが見えた。


だけど逃げる事ができない。


腰が抜けてしまって動けないのだ。
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