自殺カタログ
☆☆☆

教室の入るのが億劫だった。


理央まで話が伝わっていたと言う事は、クラス内で知らない子はもういないはずだった。


あたしはドアの前で立ちどまり、呼吸を整えた。


アンミたちにイジメられていた時の情景が思い出される。


誰も助けてくれず、冷たい視線だけ感じていたあの頃。


「芽衣、無理しなくていいよ?」


その声と共に、理央の暖かな手の感触があった。


握りしめられて右手を見て、心の中が暖かくなるのを感じる。


あたしはもう1人じゃない。


そんな風に感じられた。


「ありがとう理央。あたしは大丈夫だから」


あたしは自分に言い聞かせるようにそう言って、ドアを開けたのだった。


クラスメートたちと視線がぶつかる。


その瞬間、教室の中が水をうったように静かになった。


心臓がドクンッと大きくはねて、嫌な汗が滲んでくるのを感じた。


だけど、それはほんの一瞬の出来事だった。


「よぉ! 芽衣!」


龍輝のそんな声で緊張は解けた。
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