自殺カタログ
龍輝がどんどん歩いて近づいてくるから、あたしは咄嗟に後ずさりをしていた。


龍輝の笑顔が、妙に恐ろしく感じる。


「お前。よくやったなぁ!」


そう言い、あたしの肩を叩く龍輝。


わけがわからないあたしは混乱したまま立ち尽くす。


そんなあたしを見て、すぐに晃紀が駆けつけた。


「芽衣、昨日は大丈夫だったか?」


「う、うん……」


「あの女、1人で階段から落ちたんだってな! 傑作だぜ!」


龍輝が大きな声でそう言うと、クラス内からどっと笑い声が湧いた。


ドアを開けた瞬間の何とも言えない視線は、龍輝の出方を伺っていたようだ。


そして龍輝はあたしの事を受け入れた。


それはつまり、クラス全員から受け入れられたと言う事だ。


あたしはホッと胸をなで下ろした。


どうやらあたしはイジメのターゲットにならずに済んだようだ。


それ所か、龍輝はアンミが階段から落ちたことが相当嬉しいらしく、あたしに詳しく話を聞かせろと催促してきた。


龍輝の机に移動してきたあたしは椅子を用意され、その周りを百花たちが取り囲んだ。


こいつらの輪の中に入るなんて死んでもゴメンだと思っていたのに、今のあたしの立場はまるでクラスカーストのトップだった。
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