自殺カタログ
両親
家に帰ってもそこには誰もいなかった。


あたしのお母さんはあたしが中学へ上がる時に離婚した。


あたしは仏壇にご飯を備えてから、洗濯物を取り込んだ。


お父さんは真面目で仕事熱心、それに家族思いの人だった。


だけどお母さんがいなくなってから変わってしまった。


どれだけ頑張っても日常に楽しみを見出す事ができなかったお母さん。


それを見ていたお父さんは、努力が報われるのはほんの一握りなのだと痛感してしまったのだ。


自分はなにをやっても今以上にはなれないかもしれない。


自暴自棄になり、仕事は休みがちになっていった。


そして若い女とよく遊ぶようになったのだ。


その女は派手な化粧に派手な服を着て、あたしの前でも構わずお父さんとベタベタくっつく。


そんな女を家に上げてほしくないと思っていたが、お母さんがいなくなって茫然自失となっていたお父さんを支えてくれているのだと思い、必死で我慢していた。


そしてついにお父さんはその女と再婚してしまったのだ。


あたしのお母さんとは似ても似つかないその女は、家事のすべてを放棄した。


キャバクラで働いたお金の半分をあたしに渡すと「じゃ、家の事はお願いね」と、真っ赤な口紅でほほ笑むのだ。


女はナンバーワンのキャバクラ嬢らしく、お金に困る事はなかった。


だけど家のことはなにもしない。


あたしは学校へ行く前と帰ってからのほとんどの時間を家事に費やす事になった。


お父さんは会社を辞めてアルバイトに転職した。


時間とお金を確保したお父さんは外で遊んでばかりでなかなか家に戻ってこなくなった。
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