自殺カタログ
あぁ、アンミならやりそうなことだな。


あたしはぼんやりとそう考えた。


自分の立場を良くするためには、自分の体くらい差し出しそうだ。


そして龍輝はまんまとアンミにはハマったんだ。


月乃が死ぬという事態が起きなければ、きっと龍輝は今でもアンミにはまったままだったろう。


「あんただって楽しんだくせに!」


ついにアンミがキレた声を上げた。


瞬間、教室中がざわめきに包まれる。


「淫乱女」


「龍輝を利用してたんだ」


「最低、汚い女」


そんな声で埋め尽くされていく。


アンミは勢いよく立ち上がり、教室中を見回した。


だけど声は止まない。


今はもうアンミは恐怖の対象じゃないのだ。


いくら悪口を言っても誰も怯えはしない。


アンミの顔は見る見る内に真っ赤に染まって行く。


さすがに居心地が悪くなったのか、松葉づえを付きながら教室を出ようとする。


「そう言えば、1時間目は科学室だったな。俺たちも行こうぜ」


龍輝の言葉を合図に百花、登、涼太が立ち上がる。


あたしは一瞬腰をうかしかけて、やめた。


まだホームルームも残っているし、4人もいれば龍輝は満足するだろう。


4人は逃げようとするアンミを取り囲むようにして、教室を出たのだった。
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