自殺カタログ
そんな状況で始まった科学の授業は滞りなく進んでいった。


龍輝たちのチームはほとんどの作業をアンミ1人にやらせ、全員のノートもアンミ1人がとっていた。


それ以外にとくに変わった様子はない。


45分の授業はあと少しで終わる。


時計を確認した科学教師は教材を片付け始めている。


なにかあるとしたらこの時間だと思っていたけれど、思い違いだったか。


そう思った時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。


クラスメートたちが解放されたと言う雰囲気で科学室から出て行く。


何も起こらなかったことに少しだけ不満を抱きつつ、あたしも立ち上がった。


その時だった。


アンミがヨロヨロと立ち上がったのが見えて、あたしは足を止めた。


アンミが使っていた松葉づえは龍輝が持っている。


あれを奪われてしまってうまく歩けないようだ。


それを見た百花が楽しげな笑い声を上げる。


テーブルに掴まってどうにか立ち上がるものの、足を前に進めることができないアンミ。


ピョンピョンと片足だけで跳ねて進もうとするが、それも痛みを伴うのかほとんど動くことができずにいる。


「教室のロッカーに置いておいてやるから、取りに来いよ」


龍輝がそう言い、松葉づえを持ったまま科学室を出て行ってしまった。


百花たちはその後を追いかけて、科学室の中にはあたしとアンミと理央の3人だけが残っていた。
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