自殺カタログ
あたしは自室に向かうと鞄からカタログを引っ張り出してペラペラとめくってみた。


こうして見ると自殺方法は本当に様々だ。


カタログに書かれている電流を流して死ぬ方法なんて、思いもつかないやり方だ。


睡眠薬を使うので死んだことにも気が付かず安らかに眠れると、説明には書いてある。


本当だろうか?


デメリットとしては多少の知識と準備が必要である事が書かれていた。


メリットばかりではなく、ちゃんとデメリットまで書かれているのがいい所なのかもしれない。


読んでいる内に、玄関が開く音が聞こえて来た。


お父さんだ。


咄嗟にそう思ったが、カツカツというヒールの音が聞こえてきてあの女が戻って来たのだとわかった。


あたしは部屋を出て玄関へ向かう。


多少酒の匂いを漂わせながら、真っ赤なドレスを着た女が玄関先に座っている。


「今日はどうしたの?」


そう声をかけると女は振り向いた。


顔色があまりよくないようだ。


「ちょっと風邪引いちゃったみたで、早退してきたのよ」


女はそう言うとヒールを玄関に脱ぎ捨てて廊下に上がった。


身長はあたしと変わらないくらいだけれど、髪の毛を上に上に盛っているので5センチほど高く見える。


その足取りはふらついていて、あたしは慌てて女の体を支えた。


驚くほどに細い。


ナンバーワンの座を維持するために相当な努力はしているのだろう。
< 24 / 311 >

この作品をシェア

pagetop