自殺カタログ
「大丈夫?」


「大丈夫よ……」


そう言うものの、ほってはおけない。


あたしたちの生活はこの人のお金で成り立っているのだから。


あたしは女を寝室まで移動させると、すぐに風邪薬と水を用意した。


「これ、飲んで」


「ありがとう」


風邪で気が弱っているのか、女はいつもよりも素直だ。


薬を飲むとすぐにベッドに横になったので、あたしは部屋の明かりを消した。


お父さんはまだまだ帰ってこないだろうし、しばらくはあたしが診てやらないといけないだろう。


そう思い、あたしは寝室の隣にあるリビングへ移動した。


ここなら女の声も聞こえてくる。


あたしはなんとなくテレビを付けた。


音を小さくしてお笑いを見る。


陽気なお笑い芸人たちがパンツ一丁で走り回っている。


中には女性芸人まで混ざり、下着姿になって走っているのだ。


あたしはその様子を見て顔をしかめてチャンネルを変えた。
< 25 / 311 >

この作品をシェア

pagetop