自殺カタログ
☆☆☆

理央が登校してきたのはそれから20分後の事だった。


あたしがメールした時間ピッタリだ。


しかしその表情はふくれっ面になっている。


「芽衣がこの時間に登校してくるって言うから、時間を合わせて来たのに」


「ごめん理央。思ったより早く到着しちゃったんだよね」


あたしは適当に誤魔化して苦笑いを浮かべた。


教室内には数人の生徒たちが登校してきている。


登と涼太の一件があったからか、みんなとても静かだ。


普段はうるさいグループも、みんな静かに席に座っている。


まるでうるさくするとアンミの亡霊に狙われてしまうと、勘違いしているようにも見えた。


あたしは静かな教室は好きだった。


読書でも課題でも、何でも集中してやることができる。


「今日は龍輝は来るかな?」


残った課題を片付けていると、理央がそう聞いて来た。


あたしは課題から顔をあげて「わからない」と、答えた。


龍輝は思ったよりも臆病だ。


臆病だからこそ力で相手をねじ伏せている。


「このまま学校を休んだらどうする?」


「それは……つまらないよね」


あたしは本心でそう言った。
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