自殺カタログ
☆☆☆

それから更に数十分後、ホームルームの開始前に担任の先生がクラスに来た。


生徒たちはそれぞれの席に座る。


龍輝の席はポッカリと空いたままだ。


その空席を確認して「吉永君は風邪でお休みです」と、先生は言った。


あたしと理央はチラリと視線を見交わせる。


本当か嘘かはわからない。


先生はクラスの中をみまわして、そして小さくため息を吐き出した。


みんなに見えないようにしたつもりだろうけれど、生徒からはバレバレだ。


今俯いて泣きそうな顔をしているのだって、きっとみんな気が付いているだろう。


「最近……次々と不幸な事が起こっていて、正直先生も混乱しています」


声を絞り出すようにしてそう言う先生。


「だけど……みんなにはいつものように、楽しく学校に来てほしいと思っています」


その言葉で笑い出しそうになってしまう。


誰もがいつも楽しんで学校に来ていると、本気で思っているんだろうか?


あたしが学校の屋上から飛び降りようとしたことを、この先生は知らない。
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