自殺カタログ
理央がそう言った瞬間、あたしの体は制御を失っていた。


伸ばしていた手が引っ込む。


鞄に手を伸ばし、理央の部屋から出ていく自分。


「うちのお父さんの会社が作ったって言ったでしょ? それに、音の試験だって。こんな紙切れ、本当は必要ないんだってば」


理央の声が後ろで聞こえる。


今すぐ引き返したいのに、体は言う事を聞かない。


「それにしても、当初に比べれば随分早く効果が出るようになったね。こんな短期間で脳を制御できるなんて、便利だなぁ」


あたしは玄関まできていた。


理央がお見送りだとでも言うように付いてくる。


あたしが危害を加える事が出来ない事を理解しているのだ。


「それとね芽衣。あの写真に写ってたアンミなんだけどさぁ」


理央がニヤリと笑う。


「あれ、変装したあたしじゃないよ? あたし、アンミが使ってたペンなんて知らないもん。登と涼太の2人はあたしがいる部屋に来る前に悲鳴を上げて逃げて行った」


「冗談……だよね?」


どうにか声を発することができた。


「ほんとだよ」


理央が言い、あたしの体は家の外へと転がり出た。
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