自殺カタログ
隠し場所は他人の鞄の中だったり、ゴミ箱だったり、ロッカーの上だったり様々だ。


どういうわけか体操着が切り刻まれたりとか、汚されたりといった事は今まで一度もない。


彼女らはただあたしの体操着を隠し、それを探すあたしの姿を見て笑っていたいらしかった。


今日の隠し場所はトイレの掃除道具入れの中だった。


アンモニアの匂いがツンッと刺激する掃除道具入れから体操着を救出すると、あたしは消臭スプレーをかけた。


幸いな事に匂いは移っていない。


安堵しながら大急ぎで更衣室へと向かった。


もうすぐ授業が始まる。


休んでもいいと思ったけれど、単位を貰えなくなる可能性があるので休んでばかりもいられなかった。


体育館の横に隣接して建てられている更衣室に勢いよく飛び込んだ。


その瞬間、目の前に彼女たちが立っていることに気が付いたんだ。


あたしが来るのを待ち構えていたのか、更衣室の真ん中にある長椅子に座っていた彼女たちはこちらを見てニヤリと笑った。


嫌な汗が背中に流れて行くのがわかった。


思わず後ずさりをした。


入って来たドアを開けてすぐに逃げ出したい衝動に駆られる。


けれど授業はもうすぐ始まるのだ。


彼女たちだってぐずぐずしている時間なんてないはずだ。


なのに、なんだろうこの嫌な予感は……。
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