自殺カタログ
「着替えるんでしょ? アンミが手伝ってあげる」


アンミはグロスを塗ってギトギトに光る口元でそう言った。


無理矢理つくられたアヒル口が気持ち悪い。


それなのにクラスメートたちはそんなアンミを可愛いと言う。


龍輝とお似合いだと。


「え……いや、大丈夫……」


あたしは左右に首を振りながら後退していく。


このまま出口まで後ずさりし、そのまま逃げてしまおう。


頭の中でそう考えた瞬間、1人が素早くあたしの後ろに回り込んだのだ。


宮本百花(ミヤモト モモカ)だ。


クルクルに巻かれたロングヘアーはこげ茶色に染められていて、今はポニーテールにされている。


百花が少し動くだけでそのシッポは無駄に存在感を放っていた。


「逃げるなよ」


百花の声が耳元で聞こえて来る。


ゾクリと背筋が寒くなったその瞬間、百花があたしの両手を後ろ手に拘束した。


ハッと思った時にはもう遅い、完全に油断していた。
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